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2025.07.18
祝◎大阪・関西万博参加決定!大阪城公園・東外堀で水上を自由に動く床『海床ロボット』実証実験レポート

6月18日から20日の3日間、大阪城公園の東外堀で大阪・関西万博でのデモと展示が決定している「海床(うみどこ)ロボットの実証実験を行いました。

近い将来、まちのあらゆる水辺空間において、人と自然が調和する持続可能で革新的な交通インフラとして普及することを目指しているのが『海床ロボット』です。

青々とした新緑を背景に、するすると水面を進む3メートル四方の「動く床」。デジファブを活用した海床ロボットは、水辺の可能性はもちろん、船上屋台フレームへの小径木採用やデジファブを通じて、木材利用の可能性も広げています。

水と緑が織りなす都市の未来図

海床ロボット、実証実験の様子。

海床ロボットコンソーシアムが6月18日から20日にかけて実施した第4回実証実験では、海床ロボットが水上を、よりなめらかに自動航行する様子が印象的。周囲の豊かな緑陰と調和するその佇まいは、水辺の交通インフラの近未来像をみたように思います。

今回の実証実験では、『海床ロボット』の自動運航のテストのほか、『海床ロボットMINI』と『海床ロボットMICRO』を使用し、水中・水面の環境データを活用した安全航行システムの検証をおこないました。

海床ロボットMINI。

超小型水上ドローン『海床ロボットMINI』と『海床ロボットMICRO』が収集する水質データや水深情報は、単なる航行制御のためだけではありません。これらのデータは水域の生態系モニタリングにも活用でき、都市河川や運河の生物多様性保全に大きな可能性を秘めています。

都市部の水辺というと、コンクリートに囲まれた無機質な空間というイメージが強いかもしれません。しかし実際には、多くの水生生物や水鳥たちの重要な生息地となっています。
『海床ロボットMINI』と『海床ロボットMICRO』の環境センシング技術は、これらの生態系の変化をリアルタイムで把握し、人間活動と生物多様性保全のバランスを取るための貴重な情報を提供します。

LiDARによる点群データ収集(パイパーデジタルツイン 提供)。
海床ロボットMINIに搭載されたカメラで水面や水中の情報を収集、リアルタイムでモニターできる。

例えば、魚類の産卵場所や水生植物の分布状況、水質の変化パターンなどを継続的にモニタリングすることで、都市開発と環境保全を両立させる科学的根拠を提供できます。

今回の大阪の実証実験期間の直後、海床ロボットMICRO(ジンベイザメを装着)がまさかの万博デビュー。ユスリカの調査を行いました。

木材利用による循環型社会の実現

海床ロボットに使用される部材も持続可能性の観点から重要な意味を持っています。

現在の海床ロボットの船上屋台のフレームに使われているのは木材です。デジファブの利用により、さまざまな地域の水辺の用途に沿って、設計を行い、地域産材を使って、自由自在に屋台部をつくることができます。

また、『海床ロボットコンソーシアム』*に参画する『新木場海床プロジェクト』など、東京の木材流通拠点である新木場との連携も生まれています。都市部での木材利用促進と地域経済の活性化を同時に実現する取り組みとしても、キノマチは注目したいところ。

*『海床ロボットコンソーシアム』とは:PROJECT TEAM 海床ロボットコンソーシアムとは株式会社竹中工務店、国立大学法人東京海洋大学海洋工学部清水研究室、株式会社IHI、炎重工株式会社、株式会社水辺総研、新木場海床プロジェクト、一般社団法人ウォーター・スマート・レジリエンス研究協会、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、ココホレジャパン株式会社から成る共同プロジェクト

これまで都市の水辺は、交通や物流の経路として機能的に利用されてきました。しかし、気候変動による都市洪水の頻発化や、都市住民の生活の質向上への関心の高まりを受けて、水辺空間の多面的価値が再評価されています。

大阪・関西万博で切り開く自動運転船の国際連携

アート制作:ソウワ・ディライト、SAMPO

今後の『海床ロボット』は、今年10月2日から12日まで大阪・関西万博会場内「つながりの海」で水上景観演出デモを実施する予定です。ここでは光のアート作品を乗せて水面のゴミを清掃するロボットの展示を予定しています。

さらに10月8日には国際シンポジウムも開催。都市の水辺のイノベーションをテーマにディスカッションが行われます。

キノマチ的に注目したいのがオランダの『Roboat』やスウェーデンの『Zeam』との国際シンポジウム。オランダは干拓地の国として水管理技術に長け、スウェーデンは森林資源の持続可能な利用で世界をリードしています。

万博期間中のロボット&モビリティステーションでの展示も予定されており、世界に向けて日本の水辺活用技術を発信し、アピールする絶好の機会となっています。

海床ロボットは、単なる技術実証を超えて都市と自然の新しい関係性を提案しています。

人々が緑陰の下でくつろぎ、好きな水辺を自由に使いこなす。そんな光景が日常となる未来は、もはや夢物語ではありません。

技術の進歩が環境破壊をもたらすのではなく、むしろ自然との調和を深める手段となる。海床ロボットプロジェクトは、そんな希望に満ちた未来への確かな航路を示しています。

Text:アサイアサミ

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