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2020.05.21
「木材業界を励ます一心でつくった、日本初の耐火木造オフィスビル」大阪木材仲買会館 後編

木造・木質ファンとは「キノマチプロジェクト」が注目する木造・木質建築をキノマチ目線で味わう、建築カルチャーマガジンです。

未来につながる木材の活用を体現したい

日本初の耐火木造オフィスビルとして建築された『大阪木材仲買会館』、その美しさは、姿かたちだけではありません。

現在の、木材を巡る社会課題は、木材業界に深く関わる大阪木材仲買協同組合にとって最大の“自分ごと”です。

ひとつめは、国産木材の利用が絶対的に少なくなっており、産業として成り立たないレベルまで減少し続けています。そこで『大阪木材仲買会館』は、建築物でもっとも質と量が求められる構造体を木(木造)にしたことで、木材使用量を格段に増やしました。

3階建ての建物を支える「燃エンウッド®」。木をまちで使うには新しい技術が必要。

竹中工務店が開発した耐火集成材「燃エンウッド®」を使用することで、建築基準法関連の法規をクリア。それは、森林からまちへ木をたくさん循環させることと結びつきます。『大阪木材仲買会館』はそれを体現した建築なのです。

大町さん 廃業により組合員数が減っているのは、日本人が前ほど木を使わないからです。材木屋が四苦八苦しているなか、当時の理事長(雪本政通さん)が「木材業界のシンボルとなる建物を建てて元気づけよう」と申しました。建物が即、組合員さんのためにはならないけれど、デザインや建築がもつストーリーから「木材はまだいける」と思えるものができたと思います。なにより、木造がいいという思いは、組合員はみな持っていますから。

木材を巡る社会問題のふたつめは、木材流通の川上(山主、森林)・川中(材木、中間土場)・川下(まち、ひと)が繋がりきれず、木の循環が途切れてしまうこと。

竹中工務店の木造・木質建築で使われる木には、どんな山主さんに育てられ、どんな材木屋さんに加工されたのかという物語があります。その人々の想いは、この建物のいたるところ施された木の意匠から感じることができます。大阪木材仲買協同組合は、その想いを建築プロジェクトに託し、竹中工務店がものづくりを通じて蓄積してきた技術が建築に昇華したのです。

大町さん 木の良さを広めるのは非常に難しいと感じていました。しかし、ここに来てもらえれば必ずわかると思うんです。室内はほとんどが無垢材です。普通の掃除はしますが、特別なことはなにもしていません。

壁も床も木材の部屋だが、材の大きさを互い違いにするなど意匠を凝らすことで快適なインテリアになることを具現化している。

大町さんにとって、このような木造建築が普及していくことには、これからの世の中にどのような価値があると考えているのでしょうか。

大町さん 教科書的に答えるならば、地球温暖化の防止、森林の土砂崩れ防止、水源涵養、生物多様性保全等に大きな効果があるといえます。

しかし、私が見学対応の最後にいつもお願いしている内容は、「CLTや集成材を多用することに反対はしないが、構造材以外の見せるところに是非無垢材を使用してほしい。加工しない生の木は柔らかさと何ともいえない落ち着きを感じると思いますが、無垢材を広めることで林家が潤い伐採するだけではなく、再造林が推進されることになります」と伝えています。

木を伐って植えて育てるという流れが出来て初めて幹が太く成長し、しっかりと地中に根を張り巡らせ上述のように自然が守られると考えています。

「国産材が、まちの様々なところで使⽤され、まち全体が活性化してほしい」

「国産材と国⼟を守っていきたい」

その思いから『⽊材業界のシンボル』を⽬指し、大阪の木場に建った都市木造ビル。その存在がまちにあるだけで、まちにやすらぎを与えています。そして木材利用の未来を体現し、木材業界にエールを送っている。木を楽しむ意匠がちりばめられた夢の木造建築。なにより、ここで働く大町さんをはじめ、スタッフのみなさんが気持ちよく仕事ができる場になっていることが素敵だと感じました。

『大阪木材仲買会館』のどこがいちばん好きですか?と大町さんに伺うと、迷いなく「すべてです。見学者の方には建物の細部まで褒めちぎっています」と目を細めて、この建物を愛おしそうに見回したのが印象的でした。

木造・木質建築は、こんなふうに皆が愛着を持つようになるのが不思議です。愛すべき木造建築は、建てるひとはもちろん、使うひとにも、そしてまちにも愛でられるものだと再確認しました。

この建物の、もっとも印象的だといえる局面のファサード。これは、建築主である大阪木材仲買協同組合が、旧会館のときからともに咲き続けた桜の大木を切らないで済むように設計してほしいと頼み、あの局面のファサードが生まれたそうです。

桜の木を守るために設計された大阪木材仲買会館、国内外から評価される建築になったのは、そんな優しいやりとりから生まれたものだということも、最後に特筆したいと思います。

text:アサイアサミ

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