木の香り(きのかおり)とは
木材には独特の香りがあり、それは材内にある精油成分が揮発することによるものです。精油成分は“フィトンチッド”とも呼ばれ、普通一樹種に10種類以上あります。樹種によって種類、含有量が異なるため、スギの匂い、ヒノキの匂いというように樹種によって特徴のある香りとなります。
動物のように動くことのできない植物は“フィトンチッド(植物=フィトン/チッド=自衛) ”と呼ばれる精油を分泌し、外敵の昆虫や細菌から身を守り、また味方を誘引し、自然と共存・進化してきました。
この精油は葉に多く含んでいて、材では葉の10分の1から100分の1程度しか含まれていません。昔から私たちは生活の中でこの植物の香り成分の働きを、抗菌・殺虫・消臭などに利用してきました。
木の香りは、ヒノキのように材の価値を高める特徴となったり、逆に悪臭を放つアンチアリス材※のように材の欠点になるものもあります。 材に含まれる香り成分の量は非常にわずかですが、各樹種を特徴づけるうえで大きな役割を果たしています。
木の香りに含まれるフィトンチッドは、人の心身に様々な良い影響をもたらします。フィトンチッドには、精神を安定させ、不眠を解消し、快適な睡眠をもたらすリラクゼーション効果があることが血圧計測データなどにより科学的に証明されています。
森林にはこのフィトンチッドが溢れていますが、木製品になってもその効果は持続するため、木製の建物や木質の内装の部屋にいるだけで森林浴効果を得ることができます。
日本では古くから様々な建築物や家具などに木材が使われてきました。 木材が使われている建物に入ると、なんだか優しい気持ちになったり落ち着いたという経験があると思います。木の香りに包まれ私たちは無意識に癒されているのかもしれません。
※ アンチアリス材:東南アジアに産するクワ科の広葉樹。原木は悪臭を放ち、材を乾燥されると匂いは消えるが、水に濡れると再びひやな臭いを放つ。樹液は矢毒として用いられた。
Text: 竹中工務店 木造・木質建築推進本部