木のまちづくりから未来のヒントを見つけるマガジン キノマチウェブ

2020.02.27
「いまなぜ木造建築なのか」竹中工務店 佐々木 正人氏インタビュー 〜The Flats Woods Kiba Story 1〜

『The Flats Woods Kiba Story』は竹中工務店の木造建築『フラッツ ウッズ 木場』ができあがるまでを巡る物語です。

フラッツ ウッズ 木場』は、竹中工務店の木造建築技術を多く採用した次世代のコーポレートレジデンスです。都市に“人に優しい” 中高層木造建築を建てることで、木をめぐる社会問題を解決する足がかりとすることを目指しました。適材適所に木材を使うハイブリッド構造は新時代の木造建築。木という自然の素材を使うことからはじまる、工夫と技術と思いを巡るストーリーをご紹介します。

人と環境に優しい木造建築の在り方を考えていきたい

持続可能な社会へ向け、森林資源の循環の手段として建築においても木材を活用していくことが求められています。古来より日本の建築に木造が使われてきたのは日本の風土に合っている、そして人に優しいところが好まれているからだと思います。

この時代に、なるべく本当の木で構造体を支え、壁や柱梁に木を出し、木を感じられる空間を増やしていきたいのですが、今は木造の建築法規上の決まりがあってなかなか難しい状況です。

竹中工務店は、神社仏閣造営を行う宮大工がルーツの会社。創業400 年超、会社創立120 年超の間につくってきた建物のほとんどは近代建築ですが、大工の棟梁出身で木造建築に対する思い入れがあり、木造建築を現代にもう一度復活させようじゃないかと社員皆に強い思いがあると感じています。

永い歴史で培われた品質と誠実を旨とする棟梁精神は変わることなく脈々と受け継ぎ、安全・安心を犠牲にしない木造建築の在り方を考えていきたいと思います。

また当社は、建築やまちづくりを通じて、社会に貢献していくことを目指しています。

私はサステナブルな社会づくりに関して日本が遅れているとは思っていません。なぜなら江戸時代、建物は木造で木を使い、材は無駄なく使用し、ゴミをまた畑に戻し、そこで野菜や作物を育てるという自然循環型社会を実現していました。環境に配慮する精神は日本人には皆、昔から備わっているのです。

我々が目指す木造建築の背景には「森林グランドサイクル®」があります。森林の木を都市へ運んで使い、伐採した端材を発電などで有効活用してそれを地域に還元する。植林をして、森林を育てて、山の環境を維持していきたい。

木造建築を建てることで、都市と地域を結ぶ資源・産業・経済の循環を促していきたいと思います。

人口減少の時代がやってきた今、持続可能なまちにつくりかえるイメージ

「まちづくり総合エンジニアリング企業」を目指している当社ですが、豊かなまちづくりを提供するために事業領域をまちへと広げております。しかし、これからのまちづくりは大変難しいと思っています。

現代の都市開発のテーマは都市再生です。人口減少、少子高齢化の時代がやってきた今、都市を持続可能なまちにつくりかえるイメージです。

建物自体も環境に配慮したものにすべきですし、屋外スペースも緑豊かにつくっていくことは必須条件です。そこに木造建築は有効だと考えます。

その木材を搬出する地方の中核都市や、もっと小さなまちは林業をはじめ一次産業の問題が山積しています。まちを活性化するために我々建設業も含めて、産業・企業がお役に立てることはないだろうかと一緒に考えていきたい。

過疎化する地域の在り方を考えることは日本人皆の宿題です。見て見ぬ振りをすれば都市も含め、必ず自然災害につながります。

そして私自身、里山が好きなんです。里山はバランスのいいところで、居住環境は山奥過ぎず、自然環境が保たれています。庭があって少し奥に入ると人の手が適度に入った裏山がある。少し山に入ると、美味しい松茸が見つかるなど、季節折々の食材が楽しめます。

昔は、都市周辺も少し行けば自然と共生している環境がありました。それが人にとって心身ともに健全な生活環境。そういう環境へ都市の方々も気軽に行けるような背景があればいい。

あるいは自然を感じられる空間で過ごせる環境が都市にもできればいい。『フラッツ ウッズ 木場』が多少なりともその役割を担えればと願っています。

株式会社竹中工務店 取締役社長
佐々木 正人 Masato Sasaki
1977年、竹中工務店入社。大規模な開発プロジェクトを はじめ、営業、経営企画など幅広い業務を経験。2019年竹中工務店社長就任。


text:アサイアサミ photo:福岡秀敏

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