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2020.12.08
【キノマチニュース】三菱地所他6社が国産の建築用木材の生産から加工、販売までを一気通貫で手掛ける「MEC Industry(メック インダストリー)株式会社」(鹿児島県)を設立。

生産から加工、販売まで、一気通貫で行うことによって、より安く、早く、木材商品を現場へ供給することをミッションとした新会社が鹿児島県に誕生しました。

三菱地所をはじめ、建築における木材活用に精通する竹中工務店など7社が出資し、各社のノウハウを駆使して、林業・木材業界の課題を解決していくとのこと。

熊本、宮崎、鹿児島の3県で調達した木材を、鹿児島県湧水町で加工し、建築へ利用していく川上から川下までをフォローアップするやり方で業界に風穴を開ける存在です。

そんな「MEC Industry」(以下MI社)の立ちあげに関わる伊藤康敬さんにお話を伺いました。

伊藤康敬
Yasutaka Ito
1974年東京都出身。都立戸山高校、慶應義塾大学経済学部卒。東京生まれの東京育ちの文系出身ゆえ、逆に自然を愛する46歳。MEC Industry株式会社 取締役副社長。三菱地所パートナー事業部・住宅事業部・三菱地所レジデンスにて一貫してマンション開発に従事。住宅業務企画部(現関連事業推進室)所属時に社内の新事業提案制度を利用し「CLT」を利用した新規事業を提案、採用され、複数物件をCLTにて開発。その開発を通じ、高性能な建材を少品種大量生産にて提供することが、今後、木造が高層建築でのポジションを得る最重要事項であると感じ、MI社立ち上げに至る。

ーー三菱地所や総合建設会社である竹中工務店など、木材活用に関わる企業7社の出資によって設立されたと伺いました。どのような経緯(思い)から設立、出資から起業に至ったのでしょう。また出資会社はどのような立場の企業なのでしょうか。

伊藤さん 三菱地所としての強みはデベロッパー(エンドユーザー側)の視点から、どの様な建材・商品を必要としているか(ユーザー目線)を把握していること、さらにはグループ内のリソースとして設計会社や注文住宅建築会社、プレカット会社があるため、低層木造建築への対応はできる体制になっていました。

しかし、我々が見据える将来的な木造中高層建築の実現、においてはグループの知見だけで進めるより、それぞれの分野のスペシャリスト集団が一致団結した方が知見・スピードともに格段にレベルが上がると判断し、出資を打診、結果的には打診した全社から出資をいただけました。

三菱地所…MI社の大株主。デベロッパーの立場から見て本当に必要な木材商品をメーカーとなるMI社と一体となって開発していく。MI社の製品を丸の内等で利用することで、日本における木造建築を推進。

竹中工務店…木造建築においても日本を代表する「作品」を創造しているパイオニア的存在の大手建設会社。MI社においては高層建築向け技術開発の推進役。

大豊建設…建築における木材利用に積極的な建設会社。技術研究所にて製材型枠の継続的な研究を三菱地所と実施しており、商品開発の推進役。

松尾建設…本社社屋にCLTを使用するなど、木造建築に積極的なことで知られる九州における建設会社の雄。九州エリアでの更なる木造建築の普及啓蒙活動の推進役。

南国殖産…九州商社の雄。特に南九州エリアにおける情報網は随一であり、その情報網を活かした共同ビジネスなど。

ケンテック…スーパーフェローデッキなどの合理化建材製品の開発・製造販売における大手メーカー。製材型枠を三菱地所と共同で開発しており、商品開発の推進役。

山佐木材…九州の大手製材メーカー。CLT納材の実績も多く、MI社と商品供給での協力体制に期待。

ーーMI社の企業理念を教えて下さい。

伊藤さん 「未来と共に興す」です。

「世の中に良い循環を創る」という当社の目標を、「興す」という言葉に込めました。「未来と共に」の「と」は、単純な価値創造のみならず、変わりゆく世の中の状況にも寄り添いながら、「未来と、そして皆様と共に新しい価値を創造していく」という広義の貢献意思を表してます。

ーー伐採前に山林に欲しい木材を伝える『プル型』のスタイルが現在の森林業界に及ぼす影響をどうお考えですか?

伊藤さん 「行き先を決めずに在る木を切る、から事前に要望を把握し効率的に切る」が可能となります。これは、伐採現場の生産性向上と併せて、育林において必要な木を育てることが一番効率的に収益を生み出すということを森林業界に伝える活動とも考えてます。

山佐木材の中間土場

効率的とはすなわち経済的でもあり、私たちは必要な木を速やかに入手でき、業界としても経済的に林業を営める。この流れが定着することで、最終的には日本の林業が復活する可能性は高いと考えます。

ーーストーリーあるマテリアルである木を使う木造は、今後、日本の暮らしにどんな影響を及ぼすと予想しますか?

伊藤さん 山林は日本を象徴する原風景であり、日本のあらゆる地方を回りましたが、同じ山林でも地域によって特色がある気がします。

その特色こそが木が持つストーリーなのかもしれません。工業製品が溢れ、ITの進化により時間軸がどんどん早まる現在において、悠久の時間をかけて成長する木があらゆる生活シーンに登場することで、忘れかけていた日本の原風景や、時間に追われ希薄化している人間関係を取り戻す良いきっかけになる気がしています。

MEC Industry株式会社リンク

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