皆さん、新年度になりました。心機一転といきたいところですが、なかなかそのような状況になりませんね。
キノマチウェブは、僕が編集長を拝命してからこの4月で1年が経ちました。振り返ってみると、川上の木と川下のマチや生活を結ぶ水の流れがおぼろげながら見えてきたような感覚があります。
記事として「山を買って生活基盤を再設計する」、「DIYで生活空間を自然素材で囲む」、「国産材を用いた10階を超える中高層都市木造プロジェクト」などの新しい動きをお伝えしました。また「フィンランドのような林業先進国の国家戦略に学ぶ」ことも特集しています。
一方で国際的な気象変動への取り組みや政府の脱炭素宣言を受け、キノマチ周辺にも強い追い風が吹き始めました。この風は季節風のようなものではなく、2050年までの恒常風ともいえるでしょう。その風に乗って日本各地でキノマチが実現しているような、理想的な状態にまで持っていけたら最高です。
そんなキノマチ実現の最大の鍵は、改めて途切れた循環の再生、特に森林関連の産業再生だと思います。
1万3千年くらい続いたといわれる縄文時代、日本人の祖先は森林に守られ、木と共に生活していたのではないかと想像します。その間、自然の生態系も今よりはるかに持続可能でした。
そして江戸時代には、人々は木と川を生活近くに取り込み、それがまちの文化を形づくっていました。日本人には永く豊かな森林や水と共に暮らしたDNAが組み込まれているのでしょう。
しかし、明治以降になると鉄とガラスとコンクリートなど人工物の時代となり、森林産業のサプライチェーンが衰退してしまった。そこで、今、サプライチェーンの「鎖」の再生が必要になっている。
少し、余談になりますが、今、気候変動やサステナビリティの世界で「regeneration(リジェネレーション)」という概念が地球規模の社会課題を解決するために注目され始めています。
持続可能性だけを追求するのではなく、地球環境を再生しながら、生態系全体をさらに繁栄させていく考え方を指しているのですが、この林業サプライチェーンの再生はまさに「regeneration」そのものではないかと考えています。
そんな追い風も受け、どうやって再生の「鎖」をつなげ、現代に合致した国際競争力も有する磨かれたサプライチェーンに再構成するのか、大変な難題です。
今年、キノマチウェブでは北海道での活動をいろいろと採り上げようとしているのですが、コラムでは北海道、それも先日、道内中央部の「名寄」から北緯45度線を超えて進んだ「天塩」、あるいは北緯45度線の南の「士別」での森林グランドサイクル®についてこれから3回連載でお伝えしたいと思います。
(語り手)キノマチウェブ編集長
樫村俊也 Toshiya Kashimura
東京都出身。一級建築士。技術士(建設部門、総合技術監理部門)。1983年竹中工務店入社。1984年より東京本店設計部にて50件以上の建築プロジェクト及び技術開発に関与。2014年設計本部設計企画部長、2015年広報部長、2019年経営企画室専門役、2020年木造・木質建築推進本部専門役を兼務。