2021年3月30日の日本経済新聞朝刊に「大手建設機械メーカーが林業機械事業の売上高を現状の4割増しに増やそうとしている」という記事がありました。
伐採だけでなく植林の機械化も推し進め、循環型林業を通じて地球温暖化の抑制にも貢献することを狙いとしているとの記事でした。
林業の機械化はサプライチェーン=「鎖」の近代化ともいえますが、この記事では北米や東南アジア、ロシアの各市場の開拓といった、海外向け建設機械に特化した内容でした。
このような建設機械適用の話になると、どうしても日本の急峻な地形がネックになるという声が聞こえてきますが、比較的フラットで広大な土地を持つ北海道なら、その制約から逃れられるのではないか、と思ったりします。
僕は3月22日、北海道大学の多大なご協力によって、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター森林圏ステーションが運営する7つの研究林のうち、最北端の北緯45°付近にある天塩研究林に入ることができました。
天塩研究林は総面積22,517ヘクタール。それはなんと東京ドーム約5千個分。なかなかそれだけのまとまった土地はありません。北海道ならではのスケールともいえそうです。
主な目的はその天塩研究林で行われている「アカエゾマツ・トドマツ造林地間伐事業」と「カラマツ林の炭素循環機能に関する観測」の実践地への訪問です。
前者はこれまでに3回の保育間伐を経て、47年生の道産木であるアカエゾマツ・トドマツを間伐している地です。
周辺にはそれに加えてやはり道産木のシラカンバやミズナラなども群生していました。
北海道ならではの森林テロワール感が満載のこの植林区画で今年3月からせっせと働くのは、「伐採・木寄せのザウルスフェラバンチャ」、「枝払い・採材のプロセッサー」、「集材・運材のフォワーダの施業機械」の3兄弟(僕が勝手に命名)です。
伐採された丸太としての直径は18~22センチくらい。やはり場所柄か少し成長がゆっくりのようです。
最近、需要が多いといわれる住宅メーカー用に3メートル、バイオマスなどの原料材として3.65メートルの丸太を供給する。このような施業機械とそのオペレータによる効率化、それは生産性を高める近代的な鎖といえます。北海道天塩での伐採近代化を身近に感じることができました。
(語り手)キノマチウェブ編集長
樫村俊也 Toshiya Kashimura
東京都出身。一級建築士。技術士(建設部門、総合技術監理部門)。1983年竹中工務店入社。1984年より東京本店設計部にて50件以上の建築プロジェクト及び技術開発に関与。2014年設計本部設計企画部長、2015年広報部長、2019年経営企画室専門役、2020年木造・木質建築推進本部専門役を兼務。