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2021.09.24
【北海道地区FMセンター】現場日記①着工/設計のはじまり『山鼻屯田兵村 × 札幌竹友寮 = ゲニウス・ロキを感じる建物に』

はじめまして、竹中工務店北海道支店設計部の垣田淳と申します。

2021年4月に無事着工した『北海道地区 FMセンター』。これから竣工まで数回に渡ってこの建物に関わる担当者たちが様々なテーマを独自の切り口で現場日記として発信していきます。

今回は、この建物をデザインした設計者として、『北海道地区 FMセンター』設計のはじまりについてお話したいと思います。

垣田 淳 Jun Kakita
東京都出身、北海道育ち。2005年北海道大学大学院修了後、竹中工務店入社。東京本店設計部に約10年所属した後、2017年より北海道支店設計部。設計部に所属しながら、2012年~2020年北海道大学非常勤講師をつとめる。

コンテクスト(文脈)から建築の意志へ

築約50年の旧独身寮を事務所として利用していた竹中工務店『北海道地区 FMセンター』の改修計画は、2019年夏頃からスタートしました。

約40人が働くオフィスをつくるために、ここで実際に働くメンバー達と一緒にワークショップを開き、「この建物内でどういう働きかたをしたいか」、「どういう活動をしたいか」、「どういう場所が欲しいか」、などなど喧々諤々やり取りをしました。

半年かかっておおよそ計画案がまとまり社内に提出!コンクリート造の既存建物を活かしながら、従来の自席以外にも社内外の人とのオープンな打合スペース(共創スペース)やリラックスできるスペース(カフェキッチンスペース+テラス)を新たに設け、社員が働きやすくリラックスできる環境を整えた提案でした。

ところが、築約50年の建物は想像以上に老朽化していたのに加え、元々コンクリート造の独身寮は空間が小割りで、新しいフレキシブルな働き方との相性も悪いと判断され、旧建物を解体し、「新築」することが決まりました。

今まで話し合ってきた改修案を下地に、新築案をイチから練り直すことに。

ここから、さらに約1年の設計が本格的にスタートしました。

旧札幌竹友寮(現北海道地区FMセンター) RC2階建。改修の予定が、木造建築を建てることに!

建築を設計する前に僕らはその場所の地歴や風土などのサーベイ(調査)から始めます。サーベイを通して、この場所や建物に特有のコンテクスト(文脈)に耳を傾け、取捨選択しながら建築を設計していくことで、建築にあたかも意志が宿る。そんな錯覚にも陥りながら線を引き始めたりもします。

『北海道地区 FMセンター』の始まりにまつわるサーベイ&コンテクストを少しだけお話します。

札幌中心部の骨格だった山鼻屯田兵村

『北海道地区 FMセンター』が位置する場所は、札幌の中心部から南西へ約5キロのところにある藻岩山の山端(山鼻)あたり。この地域は琴似に次いで二番目に明治9年(1876年)札幌本府の治安維持業務も兼ねた「山鼻屯田兵村」として開村しました。

この時代の札幌本府と山鼻屯田兵村の2つの区画割(グリッド)が現在まで継承され、札幌中心部の骨格となっています。

むかしの山鼻区画割。
資料提供:山鼻屯田記念会館

兵屋の配置は、琴似屯田兵村の兵士招集の利便性から採用された「密居制」から、農業開発を重視した「粗居制*1」になり、兵屋の間取りも土間〜居間〜畳間の3層構成で、後の屯田兵村の原型となっています。つまり、単に機能的にコンパクトに作られた兵屋ではなく、当時の労働(開墾)と生活に順応した少し余裕のある空間構成がシンプルで使いやすく、北海道全土に展開されたことになります。

山鼻屯田兵屋の間取り
資料提供:山鼻屯田記念会館

今回のプロジェクトを辿っていくと、基点として山鼻屯田兵村に行きつき、山鼻グリッド(地割)、粗居制(3層構成)、仕事と生活が一体となった生業、これらの文脈の延長線上に次世代オフィスの原型ができないかと考えるようになりました。

一方、昭和48年(1973年)に建てられた既存寮(旧北海道地区FMセンター)は当初、「札幌竹友寮」という若手社員の独身寮として使われていました。

個室と食堂・ラウンジを中心とした共用部で構成され、当時は遅く帰ってきた社員が夜な夜なラウンジで語り合っていたようです。また、建物周辺では有志により畑を耕し、皆でバーベキューもしていたことがわかってきました。

また、ここで働く人たちとのワークショップの中で、働く場所以外の要望がたくさん出てきました。

「外部や内部の人とコミュニケーションできる場所」「ホッと息を抜ける場所」「お昼ご飯を食べられる場所」「外の空気を吸える場所」……働き方改革が叫ばれる中、従来のオフィスより、少し家に近いようなあたたかい雰囲気。そんな建物は、札幌都心部のオフィス街とは異なるこの山鼻地区周辺の閑静な住宅街と調和するような気がします。

地鎮祭前日、平地になった旧北海道地区FMセンター跡地。正面に藻岩山を望む。

札幌竹友寮のときのようにコミュニケーションがたくさん生まれ、山鼻屯田兵村時代のDNAや、この場所の意志が建築に宿り、ゲニウス・ロキ*2を感じられるそんな新しい原型が生まれないかと考え、ペンを走らせました。

今回は建築のプロローグだけを話しました。次回からは「なぜ木造建築を選んだか」など具体的な建築の中身に入っていきます!

*1 粗居制:屯田兵屋の配置については、屯田兵用地の区画割りの方法によって、1戸当たりの用地を狭く取って兵屋を近接して配置する「密居制」と、比較的広い用地に距離を置いて兵屋を配する「粗居制」の2種類がある。琴似屯田兵村は「密居制」、山鼻屯田兵村は「粗居制」であり、「粗居制」がその後の北海道の屯田兵屋の原型になった。

*2 ゲニウス・ロキ:ローマ神話における土地の守護精霊。地霊。欧米での現代的用法では、「土地の雰囲気」を意味する。

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