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2022.02.18
「道産材の出番は増えていくと前向きに」北海道立総合研究機構 森林研究本部 林産試験場 大橋義德さん
〜Hokkaido FM Center Story〜

『Hokkaido FM Center Story』は、竹中工務店の木造建築『北海道地区 FMセンター』ができあがるまでを巡る物語です。

この建物は、北海道札幌市の住宅街に建ち、地上2階建、広さ856.46平方メートルの木造オフィス計画です。この低層木造建築は「北海道だからこそ」生まれたという価値を秘めています。環境、気候、地域経済ーー北海道が内包する社会課題を解決するために⽊を⼿にとった⼈びとの、肥沃な⼟地がもたらす⼒強い森林グランドサイクルをお伝えします。

(プロフィール)
語り手
地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 森林研究本部 林産試験場
大橋義德 Ohashi Yoshinori
愛知県出身。博士(農学)。技術士(森林部門/林産)。二級建築士。大学卒業後、ハウスメーカー勤務を経て1996年北海道立林産試験場入庁。2010年(地独)北海道立総合研究機構林産試験場に改組、2020年より現職。専門分野は木材強度学・木材加工学。北海道産木材の樹種特性を活かした建築材料の研究開発と産業支援業務に従事。

北海道の人工林材の歴史はカラマツとともに歩む

旭川市にある林産試験場。北海道の木材を活用し、循環利用に繋げていく研究が行われている。

50年以上前の北海道は、太平洋戦争からの復興、洞爺丸台風などを経て、森林が荒廃していました。しかし北海道の林業関係者皆さんのたゆまぬ努力によって造林が進められて森林資源が回復しました。現在では、特に人工林が大きく増えて、まさにこれから、人工林を本格的に利用する時期を迎えています。

北海道ではカラマツ、トドマツが人工林材の主力となっていますが、木造建築が進められるなかで、特に強度の高いカラマツへの期待が高まっています。

しかし、いままで北海道のカラマツは建築材としてあまり使われてきませんでした。現状でも、建築用製材としてはわずか2パーセントで、集成材ラミナとしても14パーセントほどしかなく、輸送用梱包材やパレット材が8割ほどです。

今、これだけ日本が木造建築を推進しているなか、カラマツの需要が増えているのに、産地である北海道が建築材を出す環境が整っていないのが残念ではあります。ただし、それは、長年の北海道の歴史があってのこと。

ちなみに北海道のカラマツは、明治時代から信州カラマツを移植して拡大しましたが、炭鉱のトンネルをつくるための「坑木」として利用されてきました。最初から建築材として使うために植えられてきたわけではなかったのです。

そしてカラマツ特有の材質。プロペラのように強くねじれますから、建築用木材としては不向きでした。

北海道産カラマツの材質特性

カラマツについては、国産材の中でも非常に密度もヤング係数も高い良木でありますが、それは成熟材に限られます。

成熟材というのは15年輪から外側の部分ですが、15年輪までの未成熟部分はあまり強度が高くなく、非常にねじれが大きい部分です。

ねじれの大きさで見ると、カラマツはスギの3.5倍、トドマツに比べても1.5倍以上ねじれが大きくなります。これがカラマツの建築材需要を阻んできた一番の要因です。

近年では、接着技術や加工技術が向上し集成材や合板の利用が増えてきていますが、どうしても未成熟部分のねじれが問題ですので、梱包材のように乾燥を必要としない板材の需要が今日まで占めてきたところです。

ただ、梱包材も日本の輸出産業を支える重要な産業資材であり、その用途がなければ、炭鉱の坑木としての利用が途絶えた後、カラマツ人工林材の間伐材利用がここまで進まなかったでしょうし、森林整備に大きく貢献してきたともいえます。

これからは、カラマツも大径化が進んでいきますので、成熟材のメリットを活かせるような用途も増えていければと願っています。

これから北海道の木材需要は増えるのか

北海道産材の利用状況

カラマツについては、原木の半分が製材工場で使われ、11パーセントが合板工場向けです。その他19パーセントも本州の合板工場への移出が主体ですので、合板向けが3割となり、かなり合板利用が増えています。

また、カラマツ工場で製材される8割が産業資材としてパレットや梱包材に挽かれています。そしてその9割が道外に出荷されています。

一方で集成材用ラミナは14パーセントとなりますが、その6割が本州、特に東北の集成材工場に流れているところです。建築材としては2パーセントしかなく、ラミナを含めて建築用途はまだ2割を超えていません。

道内での加工を増やす、強度を活かせる建築利用を増やす、そのためにはカラマツの利用に適した構造用集成材や合板・LVLの供給力も増やすことができたら国産材全体の建築自給率も高めることができるのではと考えます。

このような状況の中で、道内の建築・住宅の分野で道産材の使用率は、林産試験場で推計した結果で、年間の建築需要約79万立方メートルのうち、残念ながら2割くらいしか地産地消できていません。

道内建築用材の自給率

4割近くは海外からの輸入製品で、2×4工法部材が大きなシェアを占めています。本州からの移入も3割くらいありますが、ホワイトウッドやレッドウッドといった外材原料の集成材が多いので、道内での国産材自給率という意味では3割に達していない残念な状況にあります。

しかし逆をいえば、60万立方メートルくらいは輸入材と本州からの移入材で賄われていますので、その分、道産材の伸びしろがあると考えれば、まだまだ道産材の潜在需要はあると前向きに考えています。

林産試験場の敷地内にある北海道初の林業学校「北海道立北の森づくり専門学院」。百年先を見据えた森林づくりを推進するという理念のもと、林業・木材産業の人材育成を目指す。

「北海道の」林業・木材産業が成長産業として発展していくため

道内の林業・木材産業が成長産業として発展していくためには、道産材のポテンシャルを今まで以上に高めていく必要があると思います。

道産材の可能性を高めるためには、コストを下げていく量的な部分と、付加価値の高い質的な供給の両方を目指していきたいです。

そのためにはやっぱりそれぞれの用途に適した丸太を適材適所で使っていくことが不可欠となります。

ものづくりをするわたしたちも資源の事を本当に意識してつくらなければいけないですし、林業の方々にも最終製品それぞれにあった丸太を出してもらえるようにこれから一緒に取り組んでいければと思います。

私は、大学で木材を学んだのが約30年前、木材に関する研究の仕事をして約25年になりますが「木造ビル」ができる時代がやってくるとは思いませんでしたし、日本もそういう時代になったことに感慨深かったです。木材を学んだ者、木材産業をサポートする立場として、とてもうれしく思います。

木造の可能性が高まること、再生産可能でサステナブルな材料であること、構造性能、意匠性に優れ、断熱・調湿などの機能をもつ材料として木材が評価されることに、とても喜びを感じます。

これまでに、竹中工務店さんともCLTエストンブロックについて共同研究をしたことがありますが、技術研究所の研究者、構造・意匠の設計者、施工管理の技術者、それぞれの分野のエキスパートが連携して、技術的な課題を解決して、ブレイクスルーしていく姿に感服しました。

「フラッツ ウッズ 木場」で使用されたCLTエストンブロックも林産試験場を経て実用化。

竹中工務店さんは木造の新たな可能性を開拓しつづけており、今後も非住宅分野での木材利用をリードしていかれるのでしょう。

今回の北海道地区FMセンターでは、カラマツの一般流通材をつかったオフィスという新たな試みに対して、新しい構造方法や材料の使い方を示していただき、道産材の可能性を広げていただいたと感じています。各工程での課題を解決していきながら、このような試みがもっと北海道に増えて、道産材利用の促進になればと期待しています。

カラマツ・トドマツの成熟材は、外国産材に代替できるポテンシャルを持っていると思います。道産材の出番はこれからどんどん増えていくでしょうし、そうなることを願っています。



text:アサイアサミ photo:佐々木育弥

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