木のまちづくりから未来のヒントを見つけるマガジン キノマチウェブ

2020.02.25
「本当は、伐りたくない」山主・山長商店 榎本長治氏 〜The Flats Woods Kiba Story3〜

『The Flats Woods Kiba Story』は竹中工務店の木造建築『フラッツ ウッズ 木場』ができあがるまでを巡る物語です。

フラッツ ウッズ 木場』は、竹中工務店の木造建築技術を多く採用した次世代のコーポレートレジデンスです。都市に“人に優しい” 中高層木造建築を建てることで、木をめぐる社会問題を解決する足がかりとすることを目指しました。適材適所に木材を使うハイブリッド構造は新時代の木造建築。木という自然の素材を使うことからはじまる、工夫と技術と思いを巡るストーリーをご紹介します。

木の価値をわかってくださる方にうちの木を使って欲しい

木材にはA ~ D 材の区分があります。A 材は欠点がなく製材品になる原材料で、B 材は若干曲がりや傷などがある材です。

今はB、C、D 材の需要が高まっており、B、C 材は集成材や合板に、C、D 材はバイオマスの燃料材として使用されます。実はA 材でつくった無垢の材も集成材も製品価格はほぼ同じです。

無垢材をもっと使って欲しいと私は5 年ほど前から「無垢ファースト」を提唱しています。巷でよく言われる「ウッドファースト」とは「まず木でつくれないか」検討しましょうということ。

更に木でつくるならば、まず無垢材でできないかと考えることが「無垢ファースト」です。同じ価格ならば無垢材を使うのはいかがでしょうか。

そして今後は木をまるごと適材適所で活かせる使い方を心がけていくべきだとも思っています。地域の材を全て出しきれる状況がつくれないかと試行錯誤中です。

山長商店では建物の作り手である工務店さんに直接、材の価値をお話しする機会を多く設けています。それは、工務店さんが消費者へ木の価値を伝えてくだされば木を使ってくださる方が増えるのではないかと考えるからです。

そして、紀州材の価値を認めてくださる方に私たちの材を売りたいという思いもあります。

今回、『フラッツ ウッズ 木場』では燃エンウッド®の現しなど、人が触れる部分に山長商店の木を数多く使っていただきました。

私たちは山に愛情があります。本当はこの木だって伐りたくない。このまま森ですくすく生きてほしい。しかし山を保つためには循環させなければならない。

それは、人の人生よりも長い時間軸を守る話です。丹精込めて育てた木がまちの建物になれば、柱や梁としてずっと生き続けることができる。まちが森とつなが
るそんな願いのような思いを胸に、森を守っています。

山長商店 代表取締役 会長
榎本 長治 Choji Enomoto
1946年和歌山県田辺市出身。江戸時代中期創業、末期に育林事業着手した山長商店の末裔として、現在、紀伊半島南部に約6,000 ヘクタールもの自社所有林を持ち、建築素材として「紀州杉」「紀州桧」などの紀州材を守り育てている。一般社団法人日本林業経営者協会前会長。和歌山県木材協同組合連合会会長も兼務し、日本林業の持続的経営を目指す。

text:アサイアサミ photo:福岡秀敏

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