今回の日記担当者
日置 凌佑 Ryousuke Hioki
北海道出身。2017年竹中工務店入社。2018年から2021年まで竹中工務店北海道支店作業所勤務。2021年より竹中工務店北海道支店北海道地区FMセンター建替計画工事担当に。
新木架構システム「ダブルティンバー」の施工上の課題と3D施工モデルによる解決
北海道地区FMセンターは、大断面材を使用することなく大スパンの空間を実現する新木架構システム「ダブルティンバー」を開発・適用しています。
小中断面材で柱・梁・筋交を二重とすることによって一般的な軸組み構造で非住宅木造建築の構造耐力と剛性を満足することが可能となりました。
しかし、この新木架構システムを採用することによって、施工上では2つの課題が発生しました。
まず1つめが、施工情報を2D図面のみで表現することの難しさです。通常1本である木軸の柱梁を二重とすることにより、設計段階から製作段階、施工段階への正誤確認の難しさが懸念されました。
2つめは木軸部材数そのものが多くなり、建方自体が複雑化してしまうことです。
この2つの問題を解決するために、本プロジェクトではBIMを用いた新生産システムにより3D施工モデルの活用に取り組みました。
木軸3D建方計画と地組工法の検討
工事着手前に実際に木軸建方を行う協力会社と打合せを重ねる過程で、最初に木軸3Dモデルを作成し建物の全体的なイメージを掴んでもらいました。
イメージの共有が出来た後で、各部材ごとに木軸建方手順を確認していきます。部材ごとに建方の順番を決定し、木軸建方の新着を3Dで表したSTEP図(時系列の施行状況を示すことで施行手順や工期を管理する資料)を作成しました。
3D建方計画を作成した事により2Dで計画を行っていた時と比べて、建方工事開始前から詳細な内容の打合せを行うことが可能となりました。
3Dの詳細な建方計画を検討した結果、部材数が多いダブルティンバー架構では、建方の目標工期30日を大きく上回る58日が必要なことがわかりました。
そこで、クレーンでの楊重回数を減らして工期短縮することを目的として、建方前に各部材をユニット化する地組工法を適用することにしました。
下図のように工区ごとに、3D木軸モデルを確認しながら、どこに地組箇所を設ける事が出来るのかを協力会社と打合せを行っていきました。
地組工法を用いることで1工区当たりの吊りピースを約24ピースほど削減することが可能となり、工期日数は58日から目標工期である30日にまで短縮することができました。
AR技術を用いた木軸組のアンカー検査
本プロジェクトでは、ホロレンズを使用したAR(Augmented Reality:拡張現実)鉄筋の配筋検査を行っています。
この技術を応用してARによる木柱のアンカー金物の確認も行いました。検査方法としては単純で、あらかじめ基準点を架台の上に設置して、その基準点にホロレンズまたはiPadをかざすと、現実世界に3D(2D)のアンカーが映し出されるというものです。
精度という面ではまだまだ課題の多い技術ではありましたが、アンカー金物が設置されていない場合が瞬時にわかるため、ヒューマンエラー防止の効果は実感しました。
地組により工期短縮を図ったダブルティンバーの木軸建方
地組は、柱と梁を構成するための駒材(パーツ)がありますので、それらを組合わせて(写真①)、柱ユニットを作成しました(写真②)。柱ユニットを作成後、梁を接合させて門型ユニットを完成させます(写真③)。
続いて、地組した門型ユニットの建て込みです。
完成した門型ユニットを2台のクレーンを使用して吊り上げます(写真④)。吊り上げたユニットを設置する場所へと移動(写真⑤)。移動後、あらかじめ設置しておいた柱脚金物に柱を差し込み、ドリフトピンで留め固定します(写真⑥)。最後に固定したユニット同士を梁材で繋ぐステップを繰り返し建方を進めました(写真⑦)。
結果としては、工期日数・人工数ともに元々予定されていた工数の約23パーセント削減し効率的に木軸建方工事を行うことが出来ました。
今回、施工段階において事前に3Dによる建方計画を行い、省人化をはかることで28日(約48%)の工期短縮の成果も得ることができました。
このプロジェクトで使用した3Dモデルの「ArchiCAD」は、誰でも容易に使用することができ、施工計画検討の共有に適していると実感しました。3Dによる生産性向上は木軸工事と相性がよく、今後も様々な木造建築の施工に展開していきたいと思っています。