今回の日記担当者
斉藤 修司 Shuuji Saitou
北海道出身。竹中工務店北海道支店生産統括部。
将来を見据えた取り組みへのチャレンジ
建築業界の労働人口が減少するなか、竹中工務店では、省人化・生産性向上の取組みの一環として、大型ユニット施工やロボット化とともにBIMの積極活用を進めています。
BIMとは、3次元の形状情報に加え、面積などの属性情報を併せ持つ建物情報モデルのことで、設計から材料製作、施工にいたる全ての段階でBIMを活用することで生産性を飛躍的に向上させる新たな生産システムの構築を目指しています。
今回の北海道地区FMセンターに取組むにあたって、せっかく北海道産木材でつくりあげるのだから、北海道の木材加工会社も巻き込んで、BIMをつかった新しい前向きな取り組みにチャレンジしようということにしました。
設計から加工まで一貫データで!「木軸デジタルファブリケーション」
環境保全、脱炭素社会、と謳われている昨今ですが、一般住宅以外の木造化はなかなか進んでいないことは意外と知られていません。その中でも特に、構造計算が必要な中規模以上の木造非住宅分野の建物は数パーセントだそうです。
一般住宅に用いる汎用性がある木材をつかった非住宅建築というノウハウが少ない分野だからこそ、効率的な生産技術が開発できればと考えました。
今回の取組みでは、構造設計で作成したデータを元にしたデジタルファブリケーションに挑戦しました。
従来は木材を加工するためのプレカット図や、組立て用の施工図は別個に作成していましたが、一貫したデータをつかうことで、省人化やデータの再打ち込みによるヒューマンエラーの低減をめざしました。
また、加工データを利用した仕上げ納めの検討や、建方のデジタルシミュレーションへの展開など様々なメリットも期待できます。
新しい取り組みへの理解
デジタルで設計してそのまま自動加工機で木材を加工できるなら、これまでなぜ取り組んでこなかったのでしょうか。
それは、これまで非住宅分野の木造建築が少なかったことに加えて、北海道には自動プレカットマシーンを所有している工場や、所有していても使える工場が少ないことが要因でした。協力していただく工場の選定では、条件に合う工場は2工場しかありませんでした。
設計も明確になっていない中、構造計算ソフトからプレカットCAD、そして自動プレカットマシーンへの一連の流れについて、工場として対応可能かを、ソフトメーカー、工作機械メーカーを巻き込んで、なんとか検討をはじめました。
手探りのスタートと見えてきた課題
やっと決まった工場は、北海道内とはいえ建設地から約270キロ離れている北海道森町の「ハルキ」さん。コロナ禍でもあり移動しての打ち合わせはなかなかできません。
Microsoft teamsを利用して、対面したこともない先方担当者と打ち合わせをするなど、手探りな状況ななか、最初はCADデータを共有するのも一苦労でした。
同じ建物といっても、一般住宅と非住宅の中規模な建物ではつくる過程はだいぶ違います。一般住宅のプレカットを専門にしてきたハルキさんと、大規模な建物を中心に取り組んでいる私たちとでは、当然ながらモノづくりの進め方や求める精度に差がありました。
まずは当社が望む進め方や精度を説明して、何度も打合せをして意識を擦り合わせていきました。
一般住宅の建築では製作図や製作要領書を作成することはあまり一般的ではありません。また、材料受け入れ検査、製作、製品検査なども中規模建物ならではのもので、初めて行うデータ連携とともに認識を共有していきました。
様々な人たちの前向きな協力を得て、なんとかデータ連携をし、加工、現地での施工までいきつきました。同時に、まだまだソフトも機械も人も工夫の余地があることが今回の経験を経てわかりました。
今後も、次の木造建築プロジェクトや他支店での新しい木造建築にもこの貴重な経験を水平展開していきたいです。