宮城県仙台市青葉区国分町一丁目において、合同会社ウッドライズキャピタル^*1 による、環境配慮型賃貸オフィスビルが建設中です。広瀬通りに面した10階建、木と鉄骨のハイブリッド構造で、設計施工は竹中工務店が担当しており、2023年11月に完成予定です。

革新的な資金調達と、木づかいの親和性で価値を高める

本プロジェクトは、木造・木質を採り入れた環境配慮型オフィスビルの再開発を通じて、持続的な社会の実現に寄与することを目指しています。また、ファンド形式による資金調達をおこなうことで、環境に対する取組に参画したい投資家や事業者に広く門戸を開き、このような取組の裾野を広げていきたいという思いがあります。

木調を前面に

建物の外観は木調を前面にアピールすることで、広瀬通りの美しい銀杏並木との調和を図るとともに、まちなみのランドマーク性を意識しています。また、外観などの意匠面のみならず、構造材の一部に木材を採用することで、素材として活用の幅を広げ、一体的で自由度の高い造形の創出を試みています。

エントランススペースの木質空間

エントランスは外観の木調イメージをそのまま内部にも展開することで、ビルの利用者が木の持つ柔らかく暖かな素材感を身近に感じることができる空間を演出しています。

開放的な木造・木質共有バルコニー

大きな特徴として、開放的なバルコニーを各階に持つポストコロナを見据えたオフィス計画であることが挙げられます。これは環境面と衛生面に配慮した新しい賃貸オフィスのあり方を提案するという設計思想に基づいています。

木造・木質の共有バルコニーが、オフィスワーカーにリフレッシュスペースを提供し、ウェルネスや生産性に配慮した働き方を支援します。 内外装の木質化が、利用者に安らぎを与える共有空間を演出します。

燃エンウッド^®の採用と、東北圏サプライチェーンの構築

各階の共有バルコニーに設けたリフレッシュスペースには、耐火集成材「燃エンウッド」　を採用しています。その木材調達については、東北圏において山元を含めた地産地消型のサプライチェーンを構築しています。

竹中工務店が考える「森林グランドサイクル^® 」の枠組により、木材の利用というひとつの側面に留まらず、森林再生、林業の活性化といった地方創生に資する取組とすることを意識しています。

約190ｔ-CO2の炭素貯蔵量

本プロジェクトにおける国産木材の利用量は約200立方メートル、炭素貯蔵量にして約190トン-CO2と試算されます。環境省のホームページによれば、戸建住宅に住む世帯の年間CO2排出量は3.58トンとなっております^*2ので、本プロジェクトは住戸に換算すると、約53戸分の年間CO2排出量に相当する炭素貯蔵量となります。

この数値は社会全体としての環境負荷低減効果として極めて軽微なレベルに留まるものの、社会全体が環境に対する小さな取組を積み上げていくことが必要と考えています。本プロジェクトのような木造・木質建築の投資に対し、健全な収支が成立することで、それが持続可能なモデルであることの証明となり、世間に周知されることで市場の拡大に寄与することに期待しています。

木造・木質建築化の効果

木造・木質建築によるオフィスビル開発により、循環型社会の維持発展に対して意識の高いテナントを呼び込むことで物件としての競争力を維持しながら副次的な効果としても、優良テナントによる地域への利益還元や雇用の促進、循環型社会に対する積極的な取組意識の啓発といった地域貢献が見込まれます。

*¹ 合同会社ウッドライズキャピタル
　みずほ不動産投資顧問株式会社をアセットマネージャーとして組成された
　不動産投資ファンド事業においてウッドライズ仙台を開発・運用するための特別目的会社

*² 環境省ホームページ　家庭からのCO2排出量を知る～家庭の中からのCO2排出量～
　環境省「令和2年度家庭部門のCO2排出実態統計調査資料編（確報値）」図1－6および図1－7（P4）（参照2023-10-3）　　　

Text：みずほ不動産投資顧問　中里 望