木のまちづくりから未来のヒントを見つけるマガジン キノマチウェブ

持続可能な森林経営や山林の自然環境の保全に多くの人々が取り組んでいますが、市場に流通する木材は必ずしもそのような山々から伐りだされたものばかりではありません。

木材を使おうとするとき、その木材が育った山林が適切に管理されているのか、そもそも現地の法令を遵守しているのかどうかまでを確認する“木材デューデリジェンス”(以下、木材DD)が求められるようになってきました。

キノマチウェブでは「新時代の森林経営」に必要な木材のデューデリジェンスとは何か、その取り組みが求められるようになった社会的な背景、デューデリジェンスの制度について特集します。第7回は名古屋大学の岩永青史さんに、森林認証制度とそのDD手法としての限界について解説いただきます。

(プロフィール)
岩永 青史 Seiji IWANAGA
名古屋大学大学院生命農学研究科 准教授 博士(農学)。千葉県出身。筑波大学特任助教、森林総合研究所主任研究員を経て、2020年より現職。東南アジアにおける地域の人々の林業や木材加工産業の動向について研究を行ってきた。

1. はじめに 森林認証制度とは? 

「キノマチウェブ」を訪問されるかたの中には既にご存じのかたも多いと思いますが、森林認証というのは、持続的な森林管理を行っている森林から生産された木材であること、またそういった木材を原料として作られた製品であることを示す制度です。

森林認証制度には、森林の持続的管理に関する認証(FM認証)と木材製品の生産・加工・流通に関する認証(CoC認証)があります。森林が守られ、減少させずに、適切に管理されているかを認証するのがFM認証で、この認証された森林から生産された木材がそうでないものとしっかりと分別されて加工、流通していることを認証するのがCoC認証です。

この制度で認証を受けた木材を既に取り扱っているよ、というかたも多いでしょう。一方で、森林認証って結局、取得したほうがいいの?取得するとどうなるの?と検討中のかたもいらっしゃるかもしれません。第7回の本稿では、そんな方々の考える一助になる情報を提供できればと思っています。

現在、世界規模で展開している森林認証制度は2つあります。FSC(Forest Stewardship Council)*1とPEFC(Programme for the Endorsement of Forest Certification Schemes)*2です。それぞれの森林管理認証の面積は、2012年の1億5,216万ヘクタールと2億3,557万ヘクタールから、2022年には2億1,570万ヘクタールと3億1,262万ヘクタールへと大きく拡大しています。また、加工流通認証も2012年の27,979件と9,069件から、2022年には52,385件と12,939件へと増えています。

世界には独自の森林認証制度をもつ国々があります。日本ではSGEC(Sustainable Green Ecosystem Council)*3ですね。このSGECが2016年に相互承認を実現し、PEFCの仲間入りをしました。このようにPEFCは世界の国々との相互承認を軸に、その森林管理面積や加工流通認証の件数を増やしてきました。

世界では増えていることはわかりました。日本でも増加しています(令和4年度 林野庁森林・林業白書(令和5年5月30日公表)*4)。ただし、欧州の国々に比べるとまだまだその全国の森林面積に占める割合は低いと言っていいでしょう(図1)。なぜでしょうか?それは、今お悩み中の方々が抱えている「取得したほうがいいの?取得するとどうなるの?」の情報が足りないから、もしくは「取得しなくてもいい」と判断した企業がいるからであると考えます。

(図1)世界と日本の森林認証面積および認証森林の割合の比較
出典:林野庁(2023)より筆者が作成

2. 森林認証って結局、取得したほうがいいの?

私はこれまでの研究生活の多くを海外調査に充ててきました。その中で、ベトナムでの森林認証取得の傾向は興味深く、皆さんにとっても有用かと思うので、ご紹介したいと思います。

まず、これまでの調査から、企業もグループで森林認証*5を取得している小規模森林利用権保有者(ベトナムでは土地や林地を所有するのは国家で、住民はその利用権を保有しています)もその取得理由はマーケットへの対応であることがわかっています。(Iwanaga et al. 2019*6

木材加工産業の著しい発展が見られるベトナムにおいて、海外輸出は事業拡大の大きなきっかけとなります。その最大の相手国はEUで、輸出には森林認証や合法性証明などを取得していることが必須になってきていますので、その結果、輸出を目指す企業や森林利用権保有者は森林認証を取得します。

ベトナムは天然林と人工林がともに増加してきたことで知られていますが(図2)、森林管理認証面積も拡大しています。2011年から2017年にかけて急激に増加し、22万ヘクタールに達しました(図3)。しかし、その後、伸びが止まり、2022年までの間は19万ヘクタールから23万ヘクタールの間を行ったり来たりしています。輸出をしているもしくは目指している企業の多くが取得し終えたのかもしれません。

では、その中身を見ると、予想に反して、小規模森林利用権保有者によるグループ認証*5の面積のシェアが2017年の2パーセントから2022年には18パーセントへと拡大しているのです。その分、企業の認証面積は減少しています。

その理由は次のようなものです。森林認証の取得と維持のコストと認証を維持するための森林管理にかかる財政的・人的資源が必要となります。さらに、企業、特に国営企業は木材を販売する際は競売に関する国の規則に従わねばならず、認証木材であるかどうかに関係なく、最も高い価格を提示した買い手に木材を販売することになります。

その結果、企業が森林認証を取得・維持するインセンティブが低下します。一方で、グループ認証(住民)については、地域の人々がグループを結成し、森林認証を取得することを支援するプロジェクトが多く実施され、それにともなって森林認証を取得するグループが増えています(写真1)。

(図2)ベトナムの天然林・人工林別森林面積の推移。
出典:FAO(2020)より筆者が作成*7
(図3)ベトナムのFSC森林認証面積と件数の推移。
出典:FSC(2023)より筆者が作成
(写真1)ベトナムの小規模森林利用権保有者のグループが認証を取得したアカシア林(筆者撮影)。

このことは日本の面積が伸びていない要因を考える上で重要です。なぜなら、国の号令であれ、企業の環境意識の向上であれ、ビジネス上の理由であれ、一度は認証を取得した企業が認証継続を止めるということは、ペイしていなかったといえるからです。

DDは、繰り返し継続的に行われなければ意味をなしません。認証を取得して維持している間は意味がありますが、止めたとなるとDDがストップすることだけでなく、それまでの投資が無に帰してしまうのです。

認証はとらないほうがいいとは言っていません。しかし、企業がビジョンと体力に合った行動をとることが肝要です。DDにはこれまでの回で紹介された方法もあり、必ずしも森林認証である必要はないのです。

3. 取得すればいいというわけではない?

森林認証の制度としての課題について考えてみたいと思います。クリーンウッド法が改正され、2023年5月に公布されたことが話題となっています*8。2年以内に施行されます。現行のクリーンウッド法は2017年に施行されました。日本において、DDの実施および森林認証を取得することは、現行法であれ、今後施行される改正法であれ、クリーンウッド法を見据えてのことも多いでしょう。

では、DDとしての森林認証は、どこまでリスクに対応できるのでしょうか?
森林認証は、木材そのものではなく、取り扱いをしている事業者に対して付されるものであり、認定証に加えて調達する木材に対する合法性証明書(宣誓証や合法であることが記載された納品書・契約書など)も入手しなければなりません(林野庁  2023 クリーンウッド法における合法性確認(デュー・デリジェンス)手引き*9)。

つまり、認証を取得すれば万事OKというわけでもないということです。コストの割にはそれだけでDDを達成できるわけではなく、プラスアルファでコストがかかり、企業にとってはさらに大変になります。

反対に、森林認証を取得しているからといって安心してしまう企業もあるでしょう。それによってDDや製品の原産地からの経路を追跡しないかもしれません。しかし、上述のように、森林認証は取扱業者に対して付されるものであり、今、取り扱おうとしている木材はひょっとしたら森林認証材ではないかもしれませんので、常にその中身と木材の出自は把握しなければならないのです。

でも、それをするためには、前述のようにプラスアルファでコストがかかります。結局はコストに耐えることができるもしくはコストを払ってまで森林認証材が必要であるという企業が取得・維持することになるのです。

4. おわりに 森林認証を活かす?

国内やベトナム、大学院生の時に滞在していたインドネシアと、行った先々で多くの企業を訪問し、お話を聞く機会がありました。あたりまえのことですが、皆さん、経営戦略をお持ちで、現在置かれている状況において、合理的な理念の下で経営しています。

森林認証を取得することが経営的に、戦略的に、立場的にプラスになる企業が取得すればいいのです。経営を悪化させてまで取得する必要はありませんし、それによって将来的に取引先が広がるような場合は取得したほうがいいでしょう。

ベトナムでは、国営企業の多くは国の号令の下で取得しなさいということを言われたりします。2017年改正の森林法では「自主性に基づき取得すること」とは書かれていますが、取得しないと立場的によくないのかもしれません。

日本では、改正クリーンウッド法が施行され、合法性確認が義務化されれば、森林認証取得の状況も変わってくるでしょう。また、国内需要がさらに減少することが予想される中、木材製品の輸出を考えている企業もあると思います。輸出を考えるのであれば、森林認証の必要性も高まるでしょう。こういった様々な要素に鑑みて、企業のプラスになるのであれば取得するべきだと考えます。

繰り返しになりますが、無理をして森林認証を取得する必要はないです。でも、取得をきっかけに、取得することで広がるような事業の展開を創造し、プラスアルファのコストを相殺し上回るような事業の拡大を考える機会としていただきたいとも願っています。
それが、クリーンなウッドの流通につながると考えます。

引用文献:
*1:FSC(2023)Facts & Figures
https://connect.fsc.org/impact/facts-figures(参照 2023-11-16)
*2: PEFC
https://www.pefc.org/(参照 2023-11-16)
*3: SGEC
https://sgec-pefcj.jp/(参照 2023-11-16)
*4:林野庁 令和4年度 森林・林業白書(令和5年5月30日公表)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r4hakusyo/index.html(参照 2023-11-16)
*5: グループ認証
認証には1つの組織単独で取得する方法と、グループで取得するグループ認証、複数の拠点を含めるマルチサイト認証という方法があります。また、この他に、建造物や船、イベント会場などの一度しか作らないものに対する認証としてプロジェクト認証があります。
https://jp.fsc.org/jp-ja/Types_of_Certifcate(参照 2023-11-16)
*6:Iwanaga, S., Duong, D.T., Ha, H.T., Minh, N.V. (2019) The tendency of expanding forest certification in Vietnam: Case analysis of certification holders in Quang Tri Province. JARQ 53(1):67-78.
*7:FAO(2020)Global Forest Resources Assessment
https://www.fao.org/forest-resources-assessment/en/(参照 2023-11-16)
*8:合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律の一部を改正する法律の概要
https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/goho/summary/attach/pdf/summary-4.pdf(参照 2023-11-16)
*9:林野庁(2023)クリーンウッド法における合法性確認(デュー・デリジェンス)手引き
https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/goho/jouhou/pdf/r4/r4report_4.pdf(参照 2023-11-16)

森林認証制度の理解を深める参考になる文献:
Preferred by Nature (2021) How to use forest certification in a EUTR compliant Due Diligence System.
https://preferredbynature.org/library/guide/how-use-forest-certification-eutr-compliant-due-diligence-system(参照 2023-11-16)

 

企画担当:竹中工務店 三輪隆(経営企画室)小林道和、関口幸生(木造・木質建築推進本部、キノマチウェブ編集部)

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