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2024.02.19
「北海道地区 FMセンター」がウッドデザイン賞2023最優秀賞(国土交通大臣賞)を受賞!竣工から2年、社員を道産材の温もりで包む木造オフィスの使い心地とは

『Hokkaido FM Center Story』は、竹中工務店の木造建築『北海道地区 FMセンター』ができあがるまでを巡る物語です。

この建物は、北海道札幌市の住宅街に建ち、地上2階建、広さ856.46平方メートルの木造オフィスです。この低層木造建築は「北海道だからこそ」生まれたという価値を秘めています。環境、気候、地域経済ーー北海道が内包する社会課題を解決するために⽊を⼿にとった⼈びとの、肥沃な⼟地がもたらす⼒強い森林グランドサイクルをお伝えします。

(プロフィール)
語り手
藤原 拓也
大阪府出身。2016年竹中工務店入社。2022年4月より北海道地区 FMセンターの事務担当に着任。

道下さゆり
北海道北広島市出身。1991年竹中工務店中途入社。2009年11月から2017年1月まで旧北海道地区 FMセンターに在籍。2022年4月より北海道地区 FMセンターの事務担当として着任。

木造オフィスならではの使い心地とは

藤原さん 北海道地区FMセンター(以下「FMセンター」)は「北海道らしい快適さ」を目指した小規模の木造オフィスとして2021年12月に誕生しました。私たちが着任してからは2年ほどが経ちます。

建物には道産材がふんだんに使われており、様々なシーンで木の温もりが感じられる環境です。館内へ一歩踏み入れるとふわっとカラマツの香りが漂ってきて、リラックスした状態で仕事に取り組むことができます。

FMセンターのエントランス。階段や待合のベンチまで、建物の至る所に木が使用されている。

道下さん 外装に透過性があるポリカーボネートを使用していることから、館内に太陽の柔らかい光が差し込み、室内にいても自然を感じることができます。

北海道の冬は特に日没が早いので、昼間の明るく暖かい太陽の光が室内で感じられるのはうれしいです。角度によっては日差しが眩しく、日焼けを感じてしまうほど(笑)

藤原さん 利用して約2年が経ちますが、竣工時の写真と見比べると建物に使用されている木にも日焼けした跡が見られますよね。こうやって時間の経過とともに木の風合いや変化を感じられるのも木造オフィスならではだと思います。

道下さん 実際に執務室を使ってみてわかる苦労もありました。たとえば、広くて階高が高いため2階にある執務室までの移動距離が長く、重い荷物の持ち運びが大変だったり、開放的な分、収納スペースが少なくて物の保管場所に困ったりと、新しい職場で働く人が使いやすいよう工夫していくことも今後の課題です。

執務室がある2階の様子。開放的な空間が広がる。

「北海道で完結したものづくり」がウッドデザイン賞を受賞

藤原さん FMセンターは2023年にウッドデザイン賞を受賞しました。北海道で生産・加工された木材が使用されており、竹中工務店が掲げる「森林グランドサイクル」を体現したことが評価されたポイントだと思います。

道下さん 従来、大スパンが求められる非住宅建築に適した大きな道産木を使おうとすると、道内では加工できる工場が限られており、一度本州へ輸送して、加工しなければなりませんでした。

一方、FMセンターで「北海道で完結したものづくり」が実現できたのは、住宅材で大スパンの建物をつくる竹中工務店の新木架構システム「ダブルティンバー」を採用しているからです。

道内で加工できるサイズの住宅材を2重にすることで、住宅材で非住宅建築をつくる「木の地産地消」を可能にしました。

住宅サイズの柱や階段からは住まいのような親しみやすさが感じられて気に入っています。

優しい光が差し込む窓と、住宅材を組み合わせて作られた住居のような階段。

藤原さん 仕事内容にあわせて自由に働く場所を選ぶことができる「ABW(Activity Based Working)」を取り入れており、時代にフィットした働き方を追及している点も素晴らしいと感じます。

FMセンターの計画がはじまったのはコロナ禍前の2019年夏頃でした。アフターコロナの働き方を意識した設計は、実際に働く私たちにとってもすごく快適な空間となっています。

職員が自席から上を見上げた風景。自然と視界に入ってくる木が癒し効果を生んでいる。

いつも暮らしの側にある大自然をオフィスでも

藤原さん 北海道に着任してから、より自然が好きになりました。札幌市内の公園でも野生のリスやキツネなどの動物を見かけることもあり、自然を身近に感じる機会が多いです。

北海道はどの季節も自然が美しいですが、視界一面に広がる冬の銀世界に感動します。中でも美瑛町の人気スポット「クリスマスツリーの木」は、土地にどっしりと根を張り、力強く佇む姿が印象的でした。

道下さん 北海道生まれの私にとって森や木はとても身近な存在です。小さいころから木の実を採って食べたり遊んだりしていました。

小学生のときに、いつも教室から眺めていた森が伐採される出来事があったんです。景色が緑から茶色に一変し、まちが大きくなる嬉しさと悲しさを同時に感じたのを覚えています。

完成当初は小さかった植栽も日当たりの良い場所でスクスクと成長しています。

北海道の人々にとっていつも身近にあった雄大な自然。その豊かな森林資源を活用して「森林グランドサイクル」を体現したFMセンターは、厳しい寒さの中でも社員が木の温もりや太陽の光に包まれながら快適に働ける、北海道らしい木造建築の在り方を提案しています。


text:ココホレジャパン 岩井美穂 photo:佐々木育弥

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