『The Flats Woods Kiba Story』は、竹中工務店の木造建築『フラッツ ウッズ 木場』ができあがるまでを巡る物語です。
『フラッツ ウッズ 木場』は、竹中工務店の木造建築技術を多く採用した次世代のコーポレートレジデンスです。都市に“人に優しい” 中高層木造建築を建てることで、木をめぐる社会問題を解決する足がかりとすることを目指しました。適材適所に木材を使うハイブリッド構造は新時代の木造建築。木という自然の素材を使うことからはじまる、工夫と技術と思いを巡るストーリーをご紹介します。
竹中大工道具館 エグゼクティブ アドバイザー・理事
赤尾 建藏 Kenzo Akao
1967 年竹中工務店大阪本店設計部入社。 2002 年3 月(財)竹中大工道具館館長就任、現在は同館のエグゼクティブ アドバイザー・理事。他に「伝統建築工匠の技保存会」 副会長、「伝統を未来につなげる会」理事、NPO法人 AAF(Asian Architecture Friendship) 理事長などを務める。
木造建築を見れば大工がいかに心を砕いてきたかわかる
昔の大工は自ら山へ行きました。この木はどっちにねじれるだろうと目利きして、まっすぐではない木をうまいこと組んで。
それから、建物を建てるときは近くの山で育った木を使っていました。それは同じ環境で育った木でつくった建物は環境に順応して長持ちするから、まこと理にかなった建築でした。
しかし室町時代に分業が進んで以降、大工は山に行かなくなりました。製材された木を買うと木の癖がわからなくなってしまいます。
また1つの建物にバラバラの産地の木を使うようになってしまった。そのため室町時代以降の建物は400 年ぐらいしかもたず、修理が多かったのです。
鎌倉時代以前に建てられた唐招提寺の金堂は1200年以上前の木がいまだに7 割も現役で使われています。木材、とくに地域の材は長い目でみると長い時間使えて安上がりです。この価値観が現代に根付くといいなと思っています。
それに木は実に面白い。まず伐ると様々な木目があります。日本は四季があり、同じ樹種でも育った場所の違いによって木目が違います。日本人はそんな木目を愛でてきました。
そうした木の美しさを生かすために、大工は精巧な加工を極め、技を追求してきました。昔の木造建築を見れば大工がいかに心を砕いてきたのかがわかります。
木を愛し、自然と共に生きた日本人の理にかなった木利用を今、原点に立ち返すべきです。私は、世界に誇る匠の技と木が持つ魅力をこれからも皆さんにお伝えしていきたいと思っています。
text:生田早紀 photo:小禄慎一郎