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2020.02.19
「日本人は木に支えられたいと思っている」齋藤木材工業 志村 智氏 〜The Flats Woods Kiba Story9〜

『The Flats Woods Kiba Story』は竹中工務店の木造建築『フラッツ ウッズ 木場』ができあがるまでを巡る物語です。

フラッツ ウッズ 木場』は、竹中工務店の木造建築技術を多く採用した次世代のコーポレートレジデンスです。都市に“人に優しい” 中高層木造建築を建てることで、木をめぐる社会問題を解決する足がかりとすることを目指しました。適材適所に木材を使うハイブリッド構造は新時代の木造建築。木という自然の素材を使うことからはじまる、工夫と技術と思いを巡るストーリーをご紹介します。

齋藤木材工業 建築事業部主任
志村 智 Satoshi Shimura
東京都出身。2013年齋藤木材工業株式会社に入社。構造、耐火試験体の製作・開発業務をメインとした実物件となった際の施工管理業務を行っている。2018 年より現職。

カラマツの性質が“燃えない木”を生み出した

当社は、信州カラマツ等の地元材を有効活用した酒樽をつくることを目的に創業した会社です。時代の流れで樽の需要が減り、土木・建築用材をつくるようになりました。

カラマツは、「狂う、割れる、ねじれる、ヤニが出る」などの特性を持つため、加工するにはハードルの高い木材です。当社の人たちは、カラマツの特性を研究し、欠点を克服するために脱脂乾燥技術を完成させるなど技術革新を重ねてきました。

『集成材』とは、切り分けた木材を接着剤で組み合わせる人工の木材。品質が安定し、適材適所の加工がしやすいため、現在の家造りにはなくてはならない。齋藤木材工業はただ切り貼りするだけではなく、木の特性に合わせ、木目の向きを考えて接着する。

そして、竹中工務店が進める耐火集成材の開発に、当社は集成材メーカーとして積極的に協力してきました。カラマツの特性と加工法を熟知する当社は、カラマツの強さと、燃えにくい性質を活かした部材構成を提案し、今のカラマツを用いた燃エンウッド®︎の開発につながりました。

木で建物の構造を支える“木造”にこだわりたい

私の個人的な考えですが、日本人には、木に支えられたいという思いが根底にあるのだと思います。昔からずっと木の家に住んでいるからというのもあるでしょうし、木に支えられていると思うと日本人は安らげるのではないでしょうか。

見えないところにも木を使いたい。しかし多くの人がいだいている「木は燃える」という概念は人を不安にもさせます。

燃エンウッドは燃え止まり機構を備えた集成材です。芯材の周りのモルタルは芯材に熱を伝えないようにするための機能を有する層で、木が冷却剤を抱えこんでいるイメージです。

燃エンウッドは一本つくるまでラミナから1、2 週間かかります。「燃えない木」をつくるのは大変ですが『フラッツ ウッズ 木場』で人を支える柱になっていると思うとやりがいがあります。

耐火集成材「燃エンウッド」がつくられるのは長野県長和町。燃エンウッドの材であるカラマツ林が最も多い地域。齋藤木材工業はカラマツによる構造用集成材、造作用集成材の製造開発を主軸事業にしている。「他所がやらないことをしたい」というイノベーション精神あふれる会社だ。

私は、製品開発においては常に現場目線で取り組んでいます。試験に合格すれば良いというだけではなく、実用化したときに出来るだけ工場でスムーズに製作できることや、建設現場での施工性を考えています。

現在、燃エンウッドは2 時間耐火まで開発が完了していますが、2 時間耐火でつくれる建物は14 階建て(あるいは最上階から14層)までです。3 時間耐火 燃エンウッドがあれば階数制限はなく、超高層ビルもつくれます。

今後、竹中工務店が取り組まれる木造建築はもっと大きな建物でしょうから、この3時間耐火 燃エンウッドの開発にも加わりたいと思っています。

私自身、構造系の勉強をしていたのでやっぱり木が支えているのが好きなんです。燃エンウッドが支えている建物を見ると、中でがんばってるんだなぁって見えない木に癒やされるんです。

text:アサイアサミ photo:福岡秀敏

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