木のまちづくりから未来のヒントを見つけるマガジン キノマチウェブ

2026.01.27
森と人の境界線を守る仕事とは。木曽で「熊猟師・熊捌き師」の弟子募集中

以前キノマチウェブでもお伝えした、木曽の廃校を合板工場に生まれ変わらせる「シンゴーハン」プロジェクト。小径木に新たな価値を見いだし、森と都市をつなぐ取り組みとしてご紹介しました。

その木曽から、今度は少し違った角度の「森の担い手募集」のお知らせです。

長野県木曽郡上松町で、熊猟師・熊捌き師の弟子を募集しています。

2025年、木曽地域でツキノワグマの目撃情報が急増し、県は出没注意報を発出。例年なら年間7頭ほどだった捕獲数が、11月時点で50頭を超えました。50年この山と向き合ってきたベテラン猟師ですら「意味がわからん」と首をかしげる異常事態です。

その猟師、百田健二郎さん(78歳)を訪ねると、到着するなり「その現場」でした。

熊を捌く百田さん。

自己紹介もそこそこに、百田さんは解体作業の真っ最中。いま木曽地域で、熊を捕獲し、解体から加工、流通までできる施設を持つのは、ほぼ百田さんの工房だけ。作業場の冷凍庫はすでに満杯に近く、これ以上増えれば、いただいた命を土に埋めるしかなくなる。そんな切迫した現実がありました。

人が山に入らなくなると、境界線が消える

熊やイノシシなど動物が森と人里を行き来する足跡を見つけるのもハンターの仕事。

なぜ熊がこれほど人里に降りてくるようになったのか。さまざまな要因が考えられますが、そのなかのひとつは、人が山に入らなくなったことです。

かつて木曽には100人以上いた狩猟家が、いまは5分の1以下。林業従事者も減り、間伐は滞り、山から人の気配が消えました。シンゴーハンプロジェクトでも触れた「小径木が使い道のないまま放置される」問題と根っこは同じこと。

木が売れない、人が減る、山に入らない。この負のサイクルが続くことで、熊と人の境界線は曖昧になり、熊は人との距離感を見失っていくのです。

とはいえ、絶望ばかりではありません。熊肉は近年ジビエとして注目され、長野県内のオーベルジュでは高級食材として扱われています。山の恵みを経済循環の環に載せる可能性が芽生えているのです。

百田さんは、鉄砲も罠も、解体も加工もEC販売も、すべてひとりでこなせる稀有な存在。しかし78歳。この技と知恵が引き継がれるかどうかで、木曽の山の未来は変わります。

森に関わる「入り口」は、ひとつじゃない

手前にあるのは昨日穫れたイノシシ。

山や森に関わりたいと思ったとき、林業や製材だけが選択肢ではありません。熊猟師として山の秩序を守り、そこに棲む動植物の命を価値に変えて届ける。それもまた、森と人の境界線を守る大切な仕事です。

短期・中期のお手伝いからでも歓迎とのこと。百田さんが50年かけて身につけた「山と生きる技術」を、引き継いでくれる次の誰かを待っています。

キノマチは、この境界線を守ることも森林グランドサイクルのうちのひとつだと考えます。

詳細・応募はこちらニホン継業バンク|熊猟師・熊捌き師の弟子募集

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