寒伐り(かんぎり)とは
寒伐りとは、冬の樹木休眠期に木を伐採することをいい、その材木を寒伐り材といいます。
寒伐りの期間は、地域により多少ずれはあるものの秋彼岸から春彼岸までとされています。「寒中(二十四節気の小寒の日から立春の前日までの約30日間、1月5日頃から2月3日頃まで) 」は寒伐りにおける「伐り旬」といわれています。
もとより近年では通年で伐採を行っているところもあり、この「伐り旬」というのも地域・樹種により時期が異なりますが、おおむね虫害の発生しやすい4~8月は避けられる傾向にあります。
寒中に伐られる材は、耐久性が高く、割れや狂いに強く、色ツヤ・香りにも優れるなど良質であるといわれています。
また、樹木には「休眠期」があることをご存知ですか?
樹木は四季を通じて絶えず変化しています。
樹種や気候により違いはありますが、一般的な生育サイクルは次のとおりです。
・春(3~5月):萌芽、若葉が開き、新枝が伸びる。花木は開花。
・夏(6~8月):若葉から成葉へ。枝の伸長。幹・根は肥大成長。秋にかけて冬芽を形成。
・秋(9~11月):結実。養分貯蔵。
・冬(12~2月):休眠期。成長の停止あるいは抑制。落葉樹は葉を落とし、常緑樹は葉色を薄くする。
こうして養分を蓄えた樹木は休眠期を経て、春の萌芽、新たなサイクルへと生長を繰り返します。
休眠期に樹木を伐ることの長所として
・樹液流動*注1が少ないため虫にも食われにくく、水分量が少なく軽量で、脂分が多く含まれている*注2こと
・低温・低湿度の環境で傷みにくくなること
が挙げられます。
また雪上での伐採作業の面においては
・厳しい自然条件であることや、雪を掘り起こすなど前作業が必須であること
が短所として挙げられますが、
・雪上を滑らせることで木口や樹皮を土で汚さず、草木で材を傷めることなく搬出ができる
という長所があります。
写真は北海道大学天塩研究林、アカエゾマツ・トドマツ造林地での間伐作業風景です。
北海道天塩での伐採近代化については編集長コラムでも紹介しています。
*注1:
樹木の根から樹幹を上昇し、枝葉まで届く水を木部樹液といい、この樹幹内の水の流れを樹液流動という。
*注2:
樹木の心材(樹心周囲の部分)に含まれる脂分の働き等が、木材の耐腐朽性を高めている。
Text: 竹中工務店 木造・木質建築推進本部