貫工法(ぬきこうほう)とは
日本の木造建築物の伝統的な工法です。柱や束などの垂直材にあけた穴に、「通し貫」と呼ばれる木材を水平に貫通させ、楔(くさび)によって固定させる工法です。
日本における貫工法の起源は諸説ありますが、鎌倉時代(13世紀ごろ)に東大寺再建責任者に任ぜられた僧重源上人が中国で学んだ貫工法を、金堂や南大門、法華堂礼堂に採用したことが始まりだと言われています。
この時代、鑿(のみ)、鉋(かんな)といった大工道具の発展もあり、正確な穴を空ける技術が可能となっていた事と、貫工法自体の構造の強固さから、日本に広く普及しました。
貫は柱を貫通することが前提であり、柱と柱を横につなぐことで骨組みを一体化し、建物全体で地震(水平力)に耐える構造となります。
貫と柱の接合部は、木と木を組み合わせる木組みによって適度な「遊び」を作り、地震によって力を受けた部分は、木材特有の「めり込み」によって凹み歪むことで、地震力を吸収、分散し、建物の倒壊を防ぎます。
このような貫工法は、寺社仏閣をはじめとして様々な伝統木造建築で採用されていて、大掛かりなものとしては広島にある厳島神社の大鳥居や、京都の清水寺本堂があります。
2025年に開催される大阪・関西万博の大屋根リングには現代の技術で工夫を加えた貫工法が採用されており、貫工法への注目が集まっています。
Text:竹中工務店 木造・木質建築推進本部