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2020.02.15
「木を使うことが、目的にならないこと。木であることが生かせる場所に使う」竹中工務店 島田 潤氏 〜The Flats Woods Kiba Story12〜

『The Flats Woods Kiba Story』は竹中工務店の木造建築『フラッツ ウッズ 木場』ができあがるまでを巡る物語です。

フラッツ ウッズ 木場』は、竹中工務店の木造建築技術を多く採用した次世代のコーポレートレジデンスです。都市に“人に優しい” 中高層木造建築を建てることで、木をめぐる社会問題を解決する足がかりとすることを目指しました。適材適所に木材を使うハイブリッド構造は新時代の木造建築。木という自然の素材を使うことからはじまる、工夫と技術と思いを巡るストーリーをご紹介します。

竹中工務店 東京本店 設計部 建築設計 【設計者】
島田 潤 Jun Shimada
一級建築士。2016 年から竹中工務店設計部に勤務。住宅や都市木造建築の設計を手がける。

ストーリーが生まれる建築物である

『フラッツ ウッズ 木場』は12 階建ての木造ハイブリッド構造になります。木造と木質の技術を使いまして、住まう人にとって心地のよい設計を心がけました。素材として木を選ぶことの面白さは建物のひとつひとつの部材にストーリーが生まれることです。

木材の場合、木を使うと決めてから、どの樹種や仕上げがその部位に最適であるかを考えます。さらに、産地も選んで、建築主と一緒に木が伐られる山へ足を運ぶこともあります。

そうやって建物の一部になった木の柱というのは、建築主や様々な関係者と色々な会話をし、共に選択をし、現地まで選びに行ったという物語が刻まれます。そんなストーリーが備わる建物は木造でないとなかなかできません。

建物は数十年と使っていくものです。木の柱や天井を見るたびに、山へ行った記憶がよみがえり、自分が選んだ木なんだとより建物に愛着を持てることほど貴重な体験はないと思います。

木造建築を設計するにあたって気をつけていることは、木を使うことが目的にならないようにすることです。空間の設計にあたっては、木を手段として心地よい空間をつくることが重要です。それをいつでも忘れないようにしました。

たとえば、木造とはいえ天井も壁も床もすべて木にしてしまうと、木目だらけで居心地が悪い空間になることもあります。一番効果的なところに木を使い、そこで過ごすユーザーがよいと感じる空間は何かといつも考えています。

木造建築をまちにふやしても「木のまち」にはならない

まちを見渡すと、まちは建物だけで成り立っているわけではないことがすぐにわかると思います。道路や川や公園、バス停やベンチ、電線や空など多くのものがお互い働きあって「まち」という空間をつくっています。ですから木造の建物がたくさんあればすぐに「木のまち」になるわけではないと思います。

例えば森において、土の湿り気、流れる水、生き物の気配、頭上の枝、ふりそそぐ光などが、森という調和した空間を生んでいるように、「木のまち」とは、森や自然に入った時の感性を人間に思い出させるような、都市空間の総合的な構成だと私は思います。

そういった都市全体との関係を考えながら、建築のひとつひとつを設計していきたいです。

text:アサイアサミ photo:福岡秀敏

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