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2020.05.20
「木材業界を励ます一心でつくった、日本初の耐火木造オフィスビル」大阪木材仲買会館 前編

木造・木質ファンとは「キノマチプロジェクト」が注目する木造・木質建築をキノマチ目線で味わう、建築カルチャーマガジンです。

材木市場発祥の地・長堀の新ランドマーク

大阪の木場として栄えた長堀のまち。

その昔、木津川などの淀川に流れ込む河川流域の山々からの材木が集まり、「材木浜」と呼ばれる材木市場が1年中開かれていた場所です。

ここは森林とまちをつなぐ交点、橋のような存在だったのでしょう。

昔は水路や堀川が街中にあったが、現在はすべて埋め立てられて、道頓堀川のみ、その姿を残す。

歴史ある材木のまちの面影が薄らいだ現代的なまちなみに、突如姿をあらわす木の建築。それが『大阪木材仲買会館』です。

古くからある桜の木を抱え込む、印象的な曲面のファサード。

モダンなデザインでありながら、あたたかみのある木の素材感によって、まちなみと調和する大規模建築。周辺のほとんどが鉄筋コンクリートの建物であることも相まって存在感があります。

防耐火の法令により、都市部では難しいとされてきた地上3階建の大規模木造建築。大きな建築でありながら、都市に大きな木があるような、存在そのものがまちにやすらぎを与えているような印象を受けました。

玄関の意匠。

個人的に特に興味をひいたのは、玄関右手にある木の仕切り。風雨があたる部分は経年変化を感じる反面、屋根の下はまだ新しい木の風合いが残っています。色合いの変化をあえてそのままにしているのが自然の成りゆきだと感じます。

今回、お話を伺ったのは大阪木材仲買協同組合事務局長の大町洋三氏。大阪木材仲買協同組合は昭和22年に木材卸売市場の買方団体として発足。木材流通の川上(山主、森林)・川中(材木、中間土場)・川下(まち、ひと)のうち、川中の人々を支えてきました。

大阪木材仲買協同組合事務局長の大町洋三さん。

大町洋三
大阪府豊中市出身。1974年に大阪銀行入行。その後、住友海上火災保険、三井住友海上火災保険徳島支店鴨島支社長などを経て、2005年4月に大阪木材仲買協同組合へ。2013年6月より同組合事務局長に。

大町さん 堀江の地で木と関わってきた我々の歴史と伝統を踏まえ、木材のもつ健康・環境面の優れた機能をより多くの方々に知ってもらうことで、国産材の利用を促進したいという思いから、日本初となる耐火建築物の木造オフィスビルを建てました。

竣工後7年が経過した今もなお、見学者が途切れることがない『大阪木材仲買会館』。休日や予約がない場合でも、可能な限り見学に対応したいとのこと。対応がむずかしい場合も、1階と敷地内は自由に見学できるそうです。

木の意匠がここに集結しているような木質空間

3階からエントランスをのぞむ。

木質の内装材がふんだんに使用された吹き抜けに、光がたっぷりと降り注ぎます。木肌に反射した柔らかな光が満たす室内を歩くと、まるで森林浴をしている気分がします。そして、オフィスビルとしてはめずらしく、ここはエントランスで室内履きに履き替えます。

大町さん 最初は、全館土足の予定でした。ところが、竣工式のレセプションでハイヒールで歩く女性をみて、「これが毎日続いたら、あっという間にキズだらけになる」と思いました。館内のスリッパに履き替えることへの抵抗が強かったのですが、竹中工務店の設計の方々の意見もあり、説得することができました。

土足厳禁のエントランス。
3階の会議室。
会議室の壁面にも細かいスリット状の木材を使用。音の反射を適度に抑制する効果がある。
理事長室の目隠しに、光を通すほど薄くスライスした木を使用。
都市木造を支える「燃エンウッド®」。周りの木の仕上げの主張で、存在感がいつもより控えめ。
バルコニーの曲面デザインを引き立てる柔らかな木の素材感。

圧倒的な外観と同じくらい内観も木・木・木。しかも無垢材。木視率の高さは山小屋に匹敵する勢いです。

大町さん 確かに木はふんだんに使われていますが、凹凸や単調にならない意匠が木の圧迫感を和らげるつくりになっています。ここの会館を訪れた人に木の本当の良さをわかってもらえるような建物を建てて欲しいと竹中工務店にお願いしました。と同時に、この建物が、厳しい状況である木材業界のランドマーク的建物になることを期待しました。

コンクリートでできた建物に囲まれた大阪木材仲買会館は、建物としての役割だけでなく、木材業界に新たな作用をもたらしているといいます。それは「キノマチ」にもつながる、重要なキーワードでした。

text:アサイアサミ

後編につづく

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