木のまちづくりから未来のヒントを見つけるマガジン キノマチウェブ

各地域の、木のイノベーションからのアプローチ

こんにちは。ここのところキノマチウェブでは、道産材をめぐる北海道の木造建築の話題を多く扱ってきました。  
他の都府県についても意識してみれば、同様に地元産材に着目して地域創生に取り組んでいるコミュニティがまだまだ存在するはずであり、そのような地域にコンタクトし、スポットを当てて発信することもキノマチウェブの重要なミッションです。  

キノマチに関わる活動のコンタクトの仕方には多様なアプローチがあります。その中でも僕たち建設業を生業にしている者としてはやはり「木のイノベーション」から入ることがスムーズです。

建築は、大きな創造物なので注目を得ることができるとともに、ステークホルダーも多様で影響の広がりも見込め、こんなこともできそうだ、とその価値が認知されると新たなニーズを生み、さらなる高度化に向け木造建築市場の裾野が広がっていきます。

新しい木造技術によって建築と機能(耐火、耐震、経済性など)を新たに結びつける(新結合)というまさに木によるイノベーションです。

ということで今回は、木のイノベーション起点の活動の九州ヴァージョンをお伝えしたいと思います。

                                  

福岡市警固交差点(五差路)

対象建築は福岡市中央区天神の南西約1キロメートルの警固(けご)というまちにある5階建て竹中工務店設計施工による「警固竹友寮」(以下竹友寮)です。

現地に到着すると、真っ先に木造による現しの外壁が目を引きます。都市部であることから1階部分は2時間、2階から5階は1時間の耐火性能が求められる中層の建物になっています。日本の建築基準法としての耐震規定を満たしています。

木造現しの竹友寮

都市中層建物はRC造、あるいは木造であれば、耐火構造として実績のある燃エンウッド柱・梁でつくられるところです。しかし、今回は、RCフラットスラブと耐火CLT耐力壁といった柱と梁のない面材による新しい木造架構システムの適用です。                                            
 

竹友寮での木のイノベーション(燃エンウッド2時間耐火CLT耐力壁)

さらにこのシステムは「柱」がなく、通常は窓際で視界を遮る「梁」もないため室内からの眺望がよい、という快適性にも優れた建築です。実際には建築デザイン上も土間や自然通風の活用など多くの特徴や工夫が見られるのですが、ここではそれにはふれないことにします。

燃エンウッドCLT耐力壁(外壁として雨水の侵入を防ぐ) 
住戸土間(光と風を通す) 

竹友寮にまつわる木のまちづくりコミュニティ

キノマチプロジェクトとしては、単に技術開発とプロジェクト実現にとどまらず、地域の関連産業が活性化し、関係者が増えることで経済が回り、健全な植林保全や間伐などを通じた資源循環につながっていくことが理想です。そのためには地域に核となるコミュニティが存在し、先導的な役割を果たす必要があります。

この、竹友寮は福岡県福岡市にあります。そこから西に30キロメートル南部を佐賀県に隣接し、美しい海岸線が広がる最西部には糸島市。また大分県の日田を上流に持つ筑後川の河口近くには江戸時代の船大工による木工技術をルーツに家具の生産高日本一を誇る大川市。それらを地域拠点として竹中工務店九州支店設計部の人達、また福岡市木材協同組合、九州大学糸島空き家プロジェクト、糸島市林業研究クラブ、大川市の建具製作会社の方々がコミュニティを形成し、活動されていました。

図2.森林グランドサイクルと福岡キノマチコミュニティ

キノマチプロジェクトのミッションは、日本の全ての都道府県にキノマチ(まちと森がいかしあう関係が成立した地域社会)が生まれること。そのための活動、行動は地域ならではコミュニティによってのみ、もたらされる。福岡県でも世代、地域、職業をまたぐ方々によるコミュニティが生まれていることに大きな希望が見いだせました。

そんな福岡市の農林水産局HPでは「みんなで守り・楽しみ・活かす都市・ふくおかの森づくり『Fukuoka Green NEXT』が掲げられています。そこではキノマチプロジェクトと目指す方向が重なり合う、特色あるアクティビティに触れることができますので是非、訪問してみて下さい。

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(語り手)キノマチウェブ編集長
樫村俊也 Toshiya Kashimura 
東京都出身。一級建築士。技術士(建設部門、総合技術監理部門)。1983年竹中工務店入社。1984年より東京本店設計部にて50件以上の建築プロジェクト及び技術開発に関与。2014年設計本部設計企画部長、2015年広報部長、2019年経営企画室専門役、2020年木造・木質建築推進本部専門役を兼務。

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