プレカット(ぷれかっと)とは
主に木造軸組住宅等に用いる柱や梁、床や壁などの部材について、現場で施工しやすいよう、継手や仕口といった部材同士の接合部分等をあらかじめ工場などで切断加工することをプレカットといい、加工された木材をプレカット材といいます。
伝統的な木造住宅の建築では、現場で大工がのみやカンナなどを使う「手刻み」で継手や仕口を加工していましたが、昭和50年代に工場におけるプレカットの生産技術が実用化され、刻み仕事を代替するようになりました。
プレカットの主なメリットとして、
・コンピューター制御による安定的で高精度な加工
・工期の短縮、施工コストの低減
・現場での産業廃棄物(木屑・端材など)の排出を抑制
が挙げられます。
普及の背景には、熟練の大工不足による品質のばらつきの解消や、現場施工時間の短縮化がありました。
さらに大壁工法*注1の普及に伴い柱などが見え隠れ材*注2となることでプレカット材を一戸ごとに梱包・販売するようになり、利用が促進されました。現在木造軸組工法におけるプレカットの利用率は9割を超えています。*注3
寸法安定性・狂いのなさが前提のプレカットの利用は、構造材における人工乾燥材や集成材の利用割合を高めていきました。
プレカット材の普及、加工技術の向上とともに、非住宅木造建築への展開が顕著になってきています。大断面集成材やCLTに最新鋭の三次元加工機などを導入することで、中大規模のシンボリックな木造建築も実現しています。
また、コストがかかる大断面集成材に代わり、一般流通材とプレカットの組みあわせにすることで大幅なコストダウンも可能になりました。一般流通材を現しで使ったアーチやトラスフレームなどの事例や、新木架構システムを開発し採用する事例*注4 などが挙げられます。
ついには木製のものづくりのデザインからパーツに加工するまでの工程を、オンラインで完結できるクラウドプレカットサービス注5も登場しました。設計者・デザイナー・DIYユーザーなど幅広く利用され、さらなる木材利用拡大が期待されています。
*注1:
木造軸組構法のうち、壁一面を板張り又は壁塗りとする工法。柱など構造部材は、壁面内部など表に見えないところで主に利用される
*注2:
目に見えない場所に使う材
*注3:
平成26(2014)年から9割を超えて 推移している (林野庁 令和元年度 森林・林業白書)
*注4:
札幌に完成した「竹中工務店 北海道地区FMセンター」で採用の「ダブルティンバー」(竹中工務店開発)など
*注5:
日本初のクラウドプレカットサービス「EMARF」
Text: 竹中工務店 木造・木質建築推進本部